実施理由/背景
「10年以内に火打山のライチョウは絶滅する可能性がある」専門家が警鐘を鳴らす。
ライチョウの国内生息地は北アルプスや南アルプスなどの地域に分布しており、そのうち火打山は国内最北限の生息地です。しかも生息数はわずか20羽程度とされており、国内最小の個体群でもあります。
その貴重なライチョウ生息地に今、異変が生じています。信州大学名誉教授の中村浩志さんは地球温暖化などの理由により火打山の餌場が脅かされ、絶滅の可能性があると警鐘を鳴らしています。また、全国各地で甚大な植生被害をもたらしているニホンジカが山頂周辺の高山帯に出現していることが新潟ライチョウ研究会 代表 長野康之さんによって確認されました。ニホンジカによって、餌場が荒らされているとの見方もあります。
わずか20羽程度の火打山のライチョウに絶滅の危機が迫っています。今私たちができることは何か・・・
プロジェクト内容説明
ライチョウを守るために。
1957年に初めて火打山でライチョウの繁殖が報告されて以降、幾度かの調査が実施され、2007年以降は国際自然環境アウトドア専門学校により継続した個体数調査が実施されてきました。2009年には33羽以上のライチョウが確認されるなど、ほぼ30羽程度のライチョウの生息が確認されてきましたが、近年の調査では2012年31羽、2013年25羽、2014年17羽と減少が続き、絶滅が現実味を帯びてきています。
このため、妙高市では2015年から、減少要因を明らかにし、効果的な保全対策を推進させるため、ライチョウのなわばり範囲などの生態調査やライチョウを捕食する野生動物、ライチョウの餌となる高山植物を他の野生動物が食べていないかを確認するためのセンサーカメラによる調査を実施しました。その結果、キツネやテンの他これまで高山帯では見かけることはなかったニホンジカやイノシシなどの大型哺乳類が稜線上に出現していることが明らかとなったのです。
まだ始まったばかりです。今、私たちにできることは・・
日本の自然を食べ尽くすと言われるほど、ニホンジカによる食害は全国各地で生態系や農林業に及ぼすなど深刻な被害をもたらしています。樹皮を食べられた木々が枯れ、森林が衰退することで、そこを棲みかとする多くの動植物に影響を与える例も見られます。影響が深刻な地域は、尾瀬や南アルプスなど日本を代表する国立公園にも及んでおり、これが妙高戸隠連山国立公園の火打山でも起きたら、そこに棲むライチョウはひとたまりもありません。
昨年までの調査によって侵入状況は初期と考えられており、生息状況としては低密度なため甚大な被害には至っていませんが、将来に向けた対策のため、計画的な調査が必要です。
また、火打山のライチョウは冬期の行動範囲が分かっておらず、私たち人間の冬山におけるアクティビティがその生息環境を脅かしている恐れがあることから、人間、ライチョウ、それぞれの活動範囲を調べ、共生のためのルールを明確にしていく必要があります。
個体数の少ない火打山のライチョウは、様々な要因によりいつ絶滅してもおかしくない状態です。様々な調査やデータを集めその生態に合わせた取組が必要不可欠となっています。
目指すところ
ライチョウの愛くるしい姿をいつまでも!
日本のライチョウは古来より信仰の対象とされ、高山帯の生態系における象徴的な存在です。野生の鳥類でありながら人を恐れません。古くから高山に棲むライチョウは「神の鳥」として大事に保護されてきました。こうした日本固有の歴史や文化が、愛らしいライチョウを生み、私たちの間近でその愛くるしい姿を見せてくれています。そして、その姿は私たちに自然環境の大切さを教えてくれています。
妙高戸隠連山国立公園では、ライチョウを国立公園の象徴とし、専門家、行政、ボランティアのライチョウサポーターの皆さんが力を結集し、生息エリアの自然環境保全に取り組んでいるところです。
妙高市では、この愛くるしいライチョウの姿をいつまでも登山者の皆さんに見守っていただきたく、ライチョウにふさわしい生息環境や分布状況を明らかにするとともに、関係機関(環境省、森林管理署、新潟県等)と連携する中でニホンジカやイノシシの実態把握に努め、ライチョウがいつまでも安心して棲み続けられる環境の保全を目指していきます。
寄付の使い道
受け付けた寄附は、下記の用途に使わせていただきます。
○火打山とその周辺山岳のライチョウ個体群生態調査及び捕食者対策事業(令和4年度実施)
・調査に必要な機材の購入
・調査に係る人件費
・調査に係る旅費(高谷池ヒュッテ宿泊費)
・調査結果の分析に係る経費
※2千メートルを超える高山帯を広範囲に、しかも長期間調査するには労力と多くの経費が必要になります。皆様のご支援よろしくお願いします。
自治体からのメッセージ
妙高の宝を次世代のこどもたちに!
平成27年3月に私たちが待ち望んでいた「妙高戸隠連山国立公園」が誕生しました。妙高市では「生命地域の創造」というまちづくりの基本理念のもと、ライチョウを国立公園妙高の鳥として指定し、環境保全のシンボルとして、絶滅を避けるための継続的な保護対策を推進しております。
これまでの皆様からのご協力により、ライチョウ保護をはじめとする自然保全活動は定着し、今後ますますの発展を目指してまいります。
引続き、皆な様からの温かいご支援の程、よろしくお願いいたします。
妙高市長 入村 明
お礼品について
「火打山ライチョウ」のピンバッジ/「国立公園妙高」オリジナルTシャツ
火打山に生息するライチョウをモチーフにしたオリジナルピンバッジと、「国立公園妙高」のオリジナルTシャツです。
ピンバッチは、ライチョウがいつまでもそこに棲み続け、次世代のこどもたちにも、その愛くるしい姿を見せてくれることを願い作成しました。
Tシャツは、速乾性に優れフィールドワークなどに最適な高性能な製品です。
事業スケジュール
令和元年10月~2年3月:効果的な調査手法の検討
令和2年5月~:火打山とその周辺山岳のライチョウ個体群分布状況調査
令和3年度:・個体群分布調査継続 ・雪上レクリエーション活動エリアでのライチョウ生息状況調査による活動エリアマップ作製
令和4年度:・個体群分布調査継続 ・雪上レクリエーション活動エリアでのライチョウ生息状況調査継続及び活動エリアマップによる活動ルール検討
・調査の内容や保護対策の内容については、現在行っている調査結果により変わることがあります。
・このプロジェクトは、環境省や妙高市が行うライチョウ保護活動の一環で、この他にも「ライチョウ生息地回復事業」や「捕食者対策」を実施しております。
・このプロジェクトの調査結果は、非常に重要な基礎資料として、プロジェクト外においても活かされています。