実施理由/背景
北海道の国鉄電化をけん引した電気機関車ED76、解体危機を乗り越えて再展示へ
北海道の国鉄電化の始まりは1968(昭和43)年8月28日の小樽~滝川間で、電気機関車ED76形500番代を北海道向けとして開発し、主力機関車として活躍しました。ED76形500番代は22両製造されましたが、現在の保存車は当館の509の他は1両のみです。
ED76形509号(以下、ED76)は廃車になった1986(昭和61)年に現在の博物館に搬入され、保存されていました。しかし、鉄道車両に積載された車両の変圧器やコンデンサの絶縁油に強い有毒性のPCBが使用されていたことから、当館の電気機関車の機器の調査をした結果、PCBの残存個所が判明しました。見学者への影響はありませんでしたが、法律により早急な撤去・処分が求められました。PCBが使用されていた機器には大型のものもあり、その撤去・処分作業のためには、車両の解体をせざるを得ませんでした。しかし、貴重な文化遺産を少しでも残すため、各方面と協議を重ねた結果、部分的ではありますが、ED76の保存・公開の可能性が見えてきました。その実現のため、多くの、幅広い皆様にご協力、ご支援をいただきたく、このプロジェクトを行います。
プロジェクト内容説明
奇跡的に残った前頭部、歴史を後世に伝える資料にするために
ホームページとFacebookでの発表、そして報道記事により解体が全国に伝わったことでファンの方や関係者などから「解体は残念」という多くの声をいただきました。残念な気持ちは博物館スタッフも同じで、処理作業に向け安全柵が取り付けられた時は複雑な想いでした。
ところが解体を進めていく途中で部分的な保存の可能性が見えてきたのです。ED76の片側前頭部を残した形での保存・展示再開の可能性を探りました。
そして道内鉄道史において貴重な車両、歴史遺産を後世に伝えていくため小樽市で展示施設整備事業を実施することが決定しました。
令和6年度はED76の前頭部展示にとりかかり、11月頃の公開に向けた整備を行います。令和7年度にはもう1両のED75の外殻部展示作業を進める予定です。
目指すところ
電気機関車ED76の価値と魅力を引き出し、道内国鉄電化の歩みを伝える展示をつくる
北海道鉄道の発祥地である小樽は最初の国鉄電化の出発地でもあります。蒸気機関車時代から新しい時代への移り変わりの瞬間に活躍したED76。現在の私たちの生活につながる北海道の鉄道史を来館者に伝える場としての展示。そしてED76の前頭部を「実物×原寸×全体」というコンセプト展示を行い、その価値や魅力を引き出していきます。
寄付の使い道
受け付けました寄附は下記の用途に使用します。
・ED76の前頭部を保全するための適切な場所への移設(イベントハウス)
・展示再開のための補修
・車両紹介パネルの制作、展示
・フォトスポットの設置
自治体からのメッセージ
鉄道が築き上げた北海道の歴史を伝えるために
「電気機関車にPCBを含む機器がある」という報告から、その取り出しに伴う解体に至るまで、多くの皆様にご心配をおかけしてまいりました。私どもとしては「ひとつでも多くの部品をのこす」方針のもと、作業を続けてまいりましたが、ED76については前頭部を残し、保存をすることが可能となりました。北海道の鉄道電化の魁となったED76、そしてその試作機にあたるED75は、北海道が大きな曲がり角を迎えていた20世紀後半の社会を知るうえで欠くことのできない貴重な車両です。この貴重な鉄道遺産を後世に伝え残すために、小樽市総合博物館で展示をしていきたいと考えています。
しかしながら、総額で数千万円にもなると想定される経費が、事業実施の課題となっています。 鉄道を愛する一人でも多くの方に幅広いご支援をいただき、来年度に予定していますED75の全体展示につなげて行くためにも、なにとぞご協力をお願いいたします。
事業スケジュール
令和6年7月 「電気機関車ED76展示施設整備業務」の開始
令和6年8月 展示施設整備の準備作業
令和6年9月 ED76前頭部を設置場所へ搬送(予定)
令和6年10月 設置場所での展示施設整備を実施
令和6年11月 整備した電気機関車ED76の展示公開
施工業者との契約締結後に日程調整のちに決定いたします。
令和6年10月までには展示施設整備業務を完了させ、11月初めには、完成した電気機関車ED76の展示公開したいと考えています。